読書は、関心のある本を、分野にこだわらず、時間がある時に読んでいます。
その中で、心に残っている本について書いてみたいと思います。
「ふりむけば40年―私の透析人生」
杉田 収 著 考古社
著者の 杉田 収 氏は、昭和19年のお生まれで、新潟大学医学部の
病院検査部でおられ、後に、新潟県立看護大学の教授になられた方です。
昭和50年、31才の時、腎不全にて透析を開始されています。
この透析開始時の時の事を、杉田氏は以下の様に書かれています。
透析宣告があってからは、妻や子ども達のことで私の頭はいっぱいになった。
頭に浮かぶ思いは、「第二内科で血液透析の治療が始まって10年が経過しているので、
以前のように透析ですぐに亡くなることはないだろう。たぶん数年は生きられる。
仮に最大限10年生きられたら、上の娘は16歳、長男は13歳、これから生まれる子は10歳になる。もし3年後であれば生まれる子は3歳・・・。父親の顔も覚えていないだろう…育てられない。」
これらの想いが繰り返し頭を駆け巡った。眠れぬ夜が続いた。
3日目の夜になると、同室の仲間が寝静まると涙が溢れ、嗚咽が漏れそうになった。こらえながら病室を出て誰もいない薄暗い病棟の廊下を歩いた。
杉田氏は、その時の心境を以上の様に書かれています。
その後、杉田氏は、食事、運動、水分摂取などに気を付けながら、透析治療を受け
紆余曲折はありながらも、40年間、仕事をしながら健康を維持してこられています。
この間に、大学にては、腎臓病の診断をする上で大切なクレアチニン検査の新しい測定法の開発をしておられます。
また、平成8年、国際臨床化学会議がロンドンで開催された時には、ロンドンの
クロムウェル病院という所で臨時透析を受けています。英国での日本とは違った雰囲気
の中での透析の様子もエピソードとして書かれています。
現在の日本では、透析を受けられる患者さんも増え、安全に透析治療が受けられるようになってきていると思います。
透析治療の発展の陰には、患者さんの苦労や多くの医療従事者の努力があるのだと思わされた本でした。
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